同じ会社なのに、募集によって新卒年俸が異なる
メディキューブなどのブランドを展開する韓国のAPR(エイピーアール)が、2026年9月と11月に異なる採用企画を実施している。9月20日に締め切られた新卒一括募集は8部門32職種を対象とし、マーケティング、海外営業、デザイン、法務、IT、顧客対応、製造など幅広い。3か月の正社員転換型インターンは月給250万ウォン(税引き前)、転換後の大卒新卒年俸は4,500万ウォンと記されていた。
11月2日に始まった特別採用は、国内・海外マーケティング職の新卒および経験者を対象とする。新卒のインターン期間は3か月、月給は300万ウォン(税引き前)、正社員転換後の大卒新卒向け契約年俸は5,000万ウォンで、成果給は別途とされている。応募締切は11月22日23時59分、勤務地はソウル・蚕室の本社だ。
年俸の差は500万ウォン(約11.1%)、インターン月給の差は50万ウォン(20%)。しかし採用期間、職種の範囲、対象が違う。2つの数字を並べただけで『全社の初任給が一律に上がった』と断定するのは正確ではない。
別のマーケティング求人には、なお4,500万ウォンの条件がある
10月2日付のAprilskin(エイプリルスキン)オンラインマーケティング職の正社員転換型インターン募集も確認できる。こちらは月給250万ウォン、正社員転換後の年俸は約4,500万ウォンと記され、12月1日を応募期限としている。11月の特別採用とは別の募集だ。
この事実から確認できるのは、APRが異なる募集経路に異なる待遇を掲示しているということだ。11月の5,000万ウォンを、全ブランド・全部門・全新卒に共通する新たな給与水準として扱ってはいけない。
待遇差が特定スキルへの上乗せなのか、採用企画ごとの予算なのか、組織内部の報酬制度によるものなのかは公表情報だけでは判断できない。応募者は『APRの初任給』という一つの検索結果より、志望する求人票の記述と契約条件を優先すべきだ。
注目すべきは海外採用の開始ではなく、販売チャネル別の職種
APRは9月の募集でも米国、欧州、日本、東南アジアなどの海外マーケティング人材を求めていた。11月になって初めて海外マーケティングを始めたわけではない。今回の変化は、特別採用で業務の単位をより細かく示した点にある。
11月の米欧向け募集にはAmazonのMD(商品・販売運営)、TikTok Shopマーケティング、インフルエンサー施策(PR)、コンテンツ・パフォーマンスマーケティングが並ぶ。日本向けインフルエンサーマーケティングは独立して募集され、韓国国内向けにも別の職種が設けられている。
Amazonで商品を運営する仕事と、TikTok Shopで短尺動画を売上につなげる仕事、クリエイターとの協業を設計する仕事では、扱う指標も実務も異なる。職種名は販売経路ごとの能力を明確にする方向を示唆する。ただし、正式な組織改編が発表されたという証拠ではない。
海外売上高比率94%が、採用の背景を説明する
APRが10月30日に公表した2026年7〜9月期の連結暫定業績は、売上高7,731億ウォン、営業利益1,606億ウォン。海外売上高は7,229億ウォンで全体の約94%を占め、前年同期比135%増となった。売上構成比は北米46%、欧州23%で、両地域の合計は69%に達する。
APRはAmazonやTikTok Shopなどのオンライン販売を拡大しつつ、米国でTarget、Walmart、Costcoなどの小売流通網も広げている。海外売上の規模が大きくなるほど、地域の認知拡大だけでなく、モール運営、商品構成、広告運用、コンテンツ制作、販売成果の測定をチャネルごとに管理する必要が生じる。
もっとも売上の拡大がそのまま利益率の改善を保証するわけではない。7〜9月期の営業利益は前年同期比で増えたものの、為替変動などの影響で市場予想を下回った。海外販売チャネルを拡大する企業には、広告費・流通コスト・為替と収益性を併せて管理する課題がある。
海外大学出身者・外国籍応募者向けの枠も、勤務地はソウル
11月の特別採用には海外大学の卒業者・卒業予定者や外国籍応募者向けの別ルートがある。外国籍の場合は韓国のF系列ビザを保有するか、就労可能なビザの申請資格要件を満たす必要がある。市場経験や言語・文化的背景を持つ人材への応募経路を広げる設計と読める。
ただし『欧米市場を担当する』ことと『欧米で勤務する』ことは別だ。公開求人票の勤務地はソウル・蚕室のロッテワールドタワーにあるAPR本社とされている。転居や生活費、在留資格の検討では職務上の担当市場と実際の勤務地を必ず区別したい。
海外大学出身者や外国籍応募者の別枠があるからといって、海外現地法人への配属や特別なビザ支援、国籍別の採用予定数を断定することはできない。募集で確認できる範囲を超えて制度を推測すべきではない。
選考方法は『APR共通ルール』ではなく、募集別に読む
11月の新卒選考は書類、課題・面接、入社後の3か月インターン、その評価に基づく正社員転換機会という流れで説明される。面接過程ではオンラインの組織適合性検査も行う。経験者は待遇協議の段階が別にあり、3か月の試用期間中も給与は同額と案内されている。
9月募集の案内では、組織適合性検査と面接の後、一部の職種で課題選考を行うと記載されていた。説明される順番が違っても、会社全体が新しい試験を一斉に導入したことまでは示さない。募集企画と対象職種を確認して比較する必要がある。
正社員転換率や課題選考の採点基準、インターン評価の詳しい内容は公開情報から確定できない。『3か月働けば正社員になれる』と考えるのではなく、選考後も評価に基づく転換機会である点を理解することが重要だ。
応募者はツール名より、どの販売業務を担ったかを示す
Amazon関連職なら、品ぞろえ、価格、販売促進、運営指標をどう組み合わせて考えたかが説明材料になる。TikTok Shop関連職なら、短尺動画の再生や反応だけでなく、購入行動につながる過程をどう捉えたかが有用だろう。これは職務内容から導いた準備の方向性であり、必須提出物の追加を意味しない。
インフルエンサー施策ではフォロワー数に加え、ブランドとの適合性や協業成果の検証が重要になる。コンテンツ・パフォーマンス職なら、制作経験だけではなく、どの仮説を試し何を改善したかを具体的に示せるかがポイントになる。
大学のプロジェクトや個人で運営した小規模な経験でも、自分の担当範囲と結果を区別して説明できる。一方、多数のSNSを利用した経験だけでは、商業チャネルの運営能力を証明したことにならない。応募前に募集職種の実際の業務と自身の経験の重なりを確かめたい。
企業名ではなく、採用企画・市場・契約条件を比較する
APRは9月に幅広い新卒を募集し、11月にはマーケティング職に絞った特別採用を始めた。後者には正社員転換後の年俸5,000万ウォンが示される一方、別のAprilskinのマーケティング求人には4,500万ウォンの条件もある。これらを一つの全社給与改定として扱う根拠はない。
より長期的に意味があるのは、輸出を成長の中心とする企業がAmazon、TikTok Shop、クリエイター施策など、異なる販売経路の実務能力を職種として明確に募集していることだ。海外売上比率94%という数字はその背景を与えるが、待遇差の理由まで証明するものではない。
11月特別採用の締切は11月22日23時59分(韓国時間)の予定だ。応募条件、インターン契約、正社員転換の可否、選考内容については公式採用ページで最新情報を確認する必要がある。企業の採用戦略を読む際にも、会社名だけでなくどの市場・販売経路・契約を対象とした募集かを区別することが重要になる。
BANSEOG VIEW
BANSEOG VIEW | 「初任給」は企業に一つだけ存在する数字ではない
APRの9月募集における年俸4,500万ウォンと11月特別採用の5,000万ウォンは、それぞれ別の採用企画に提示された条件である。両者の差は、全社一律の賃上げを示すものではない。
10月のAprilskinの別求人には4,500万ウォンの水準が残る一方、11月の特別採用はAmazon、TikTok Shop、インフルエンサー施策を個別職種として募集する。海外売上高比率94%という事業構造と並べて見ると、販売チャネルに応じた能力の細分化が見えてくる。
応募者は志望する求人票の待遇と転換条件を確認すべきであり、企業分析では『どの会社がいくら出すか』より『どの市場のどの機能を獲得しようとしているか』が有用な問いになる。
SOURCES
参照した主な資料
- 延世大学 — APR 2026年下半期新卒一括採用(2026年9月11日)
9月募集の職種、インターン月給250万ウォン、転換後年俸4,500万ウォン、勤務地、選考方法。
- 高麗大学世宗キャリア開発センター — APRマーケティング特別採用(2026年11月3日)
11月22日締切、Amazon・TikTok職種、外国籍応募枠、インターン月給300万ウォン、転換後年俸5,000万ウォン。
- Zighang — Aprilskinオンラインマーケティング転換型インターン(2026年10月2日)
別のマーケティング求人における月給250万ウォン、転換後約4,500万ウォン、12月1日締切。
- 韓国電子公示DART — APR 2026年第3四半期連結暫定業績(2026年10月30日)
売上高7,731億ウォン、営業利益1,606億ウォン。監査前の暫定数値。
- 亜洲経済 — APRの海外売上・地域構成比(2026年10月30日)
海外売上高7,229億ウォン、売上構成比94%、北米46%、欧州23%および販売チャネル拡大。
- NEWSIS — APRが9月に続き11月も特別採用(2026年11月4日)
9月の8部門32職種と11月特別採用の時系列・募集範囲を確認。
- APR公式採用サイト
応募資格、締切、給与条件など最新の求人票を確認する一次窓口。
2026年11月4日時点の公開資料に基づく。9月の広域新卒募集(9月20日締切)は8部門32職種で、3か月転換型インターン月給250万ウォン、正社員転換後の大卒新卒契約年俸4,500万ウォン。11月のマーケティング特別採用(11月2〜22日)はインターン月給300万ウォン、正社員転換後の大卒新卒契約年俸5,000万ウォン。勤務地はソウル・蚕室、Amazon/TikTok Shop等の個別職種と外国籍等の応募枠あり。10月2日のAprilskinオンラインマーケティング個別求人は月給250万ウォン、転換後約4,500万ウォン、12月1日締切。APR 7〜9月期暫定業績は連結売上高7,731億ウォン、営業利益1,606億ウォン、海外売上高7,229億ウォン(約94%)、北米46%、欧州23%。複数求人の待遇差は全社一律の賃上げを証明しない。能力の細分化という読みは公開資料からの分析であり、給与設定の内部理由や採用人数、転換率は未確認。