7,400万人は処方患者数ではない
セルトリオンは2026年10月26日、アレルギー疾患治療薬オムリクロ(オマリズマブ)と自己免疫疾患治療薬アブトズマ(トシリズマブ)について、米国の大手医療企業と独占供給契約を締結したと発表した。この企業グループは保険会社、薬剤給付管理会社(PBM)、病院などを抱える。
さらにオムリクロは米国大手小売企業の薬局販売網、従業員健康保険、医薬品割引プログラムに入った。注目された7,400万人という数字は割引プログラム全体の会員数であり、オムリクロを処方された患者数ではない。
重要なのは人数をそのまま売上に換算することではない。保険償還を受けられる経路と、病院・薬局が実際に製品を供給できる経路に参入したことが今回の事業上の変化である。
FDAの承認と保険処方集への採用は別の段階だ
オムリクロは先行品ゾレアに対応するオマリズマブのバイオシミラーであり、アブトズマはアクテムラに対応するトシリズマブのバイオシミラーだ。バイオシミラーには先行品との高い類似性と、安全性・有効性に臨床上意味のある差がないことが求められる。
米食品医薬品局(FDA)の承認だけで、すべての保険加入者が同じ条件で薬を利用できるわけではない。保険会社やPBMの処方集(Formulary)では給付条件や優先医薬品を決め、医療機関・薬局でも採用や供給の判断がある。
オムリクロは10月5日に米国で発売され、発売時点で大手PBMの民間保険処方集で優先薬剤に採用された。相互代替可能性(Interchangeability)も取得しているが、適用される州法による薬局での代替が可能になることと、すべての保険で優先的に扱われることは同じではない。
医療グループ内で保険と病院の供給経路がつながった
今回の医療企業との契約対象は、オムリクロのプレフィルドシリンジ(PFS)製剤とアブトズマの静脈注射(IV)・皮下注射(SC)の全製剤である。当該グループの保険処方集で先行品に代わる優先薬剤となり、傘下病院への供給も開始された。
同社によれば10月から対象製品の供給と保険償還が適用されている。保険の適用経路と医療機関の購買・供給経路を同時に確保した点が、一つの卸先を増やす契約との違いだ。
ただし独占的な供給地位は当該契約と製剤の範囲に限られる。米国市場全体で先行品が排除されたわけではない。医師の判断、患者の状態、保険条件、実際の発注が処方数量を左右する。
従業員保険35万人と割引会員7,400万人を分ける
別の大手小売企業との契約では、オムリクロが店舗内薬局で販売され始めた。また約35万人を対象とする同企業の従業員健康保険では、一部のバイアル製剤を必要とする処方を除き、先行品より優先される独占的な優先薬剤に指定された。
これとは別に、同企業の約7,400万人の会員を抱える医薬品割引プログラムにも登録された。保険未加入者や対象の扶養家族などが提携薬局で割引価格を利用できる経路であり、割引プログラムの利用と保険償還は別の仕組みだ。
35万人も7,400万人もオムリクロの実際の処方患者数ではない。二つの人数を足して獲得患者数とすることもできない。示されたのは異なる保険・非保険の販売接点に参入した事実である。
既存製品の取引関係が次の製品に役立つ可能性
セルトリオンによると、今回の医療グループとの契約には既存製品の供給実績も寄与した。すでに骨疾患治療薬ストボクロとオセンベルト(デノスマブ)などを同グループ傘下の大病院へ供給していた。
つまり、新製品を販売する際に顧客関係を一から構築しただけではない。これまでの供給契約や実務の経験を通じて形成した医療機関との関係が、後続製品の提案にも活用されたと同社は説明している。
一つの製品を超えて販売組織や病院・保険ネットワークの価値が蓄積する可能性がある。ただし過去の契約があれば次の製品も自動的に採用されるわけではなく、適応症、競合品、価格、給付条件は製品ごとに異なる。
欧州の入札と米国のPBMでは、販売の入口が違う
セルトリオンによるとオムリクロは欧州26か国で販売され、2026年7月時点のスペイン市場ではシェア90%超を記録した。デンマークでも国家入札による供給成果を挙げている。これらは特定市場・時期における会社公表値であり世界全体の数字ではない。
一方、米国ではPBMの処方集、企業の従業員保険、病院ネットワーク、薬局など異なる仕組みへの対応が必要になる。同じバイオシミラーでも誰が購入を決め、誰が費用を負担するかは国によって異なる。
グローバルな医薬品事業では、製品の許認可だけでなく各国の購買・保険制度に合わせて契約し、実際に患者へ届く供給経路を運営する能力も重要となる。
第3四半期の好業績を10月の米国契約に帰してはいけない
セルトリオンは10月27日、2026年第3四半期の連結売上高1兆5,755億ウォン、営業利益5,253億ウォンを発表した。新製品群の売上高は9,058億ウォンでバイオ製品売上高の67%を占め、オムリクロの第3四半期までの累計売上高は3,205億ウォンだった。累計売上の伸びには欧州市場での販売が大きく寄与している。
しかし第3四半期は9月末で終了している。米国での発売は10月5日、今回の契約発表は10月26日である。したがって10月の米国契約が7~9月の決算を押し上げたという説明は成り立たない。
確認できるのは、成長している製品群に新しい米国販売・保険経路が加わったことだ。処方拡大や純売上、利益への寄与は第4四半期以降のデータで検証する必要がある。
実際の処方と利益につながるかを確かめる
今回の契約先企業の名称や供給価格、契約金額、実際の処方患者数は公表されていない。保険処方集への採用に伴う値引きや契約費用も不明だ。独占供給は販売経路上の成果だが、利益が保証されたわけではない。
今後は保険経路ごとの処方件数、病院からの継続注文、薬局での純売上、契約費用を考慮した採算性を追う必要がある。追加の大手PBMとの協議も10月26日時点では契約締結前と説明されている。
既存製品を通じて築いた販売網が後続製品にも繰り返し機能するなら、それは企業にとって重要な資産になる。承認された医薬品を持つことと、それを実際の治療現場へ届ける仕組みを持つことは別の競争力だ。
BANSEOG VIEW
BANSEOG VIEW|販売許可と実際の処方経路の確保は異なる
7,400万人は割引プログラム全体の会員数であり、患者数ではない。より重要なのは医療グループの保険処方集と病院への供給、小売企業の従業員保険と薬局での割引販売という異なる経路を獲得したことである。
ストボクロとオセンベルトの取引を通じた既存の病院関係が新製品の契約にも寄与したという会社説明は、販売ネットワークを後続製品に活用できる可能性を示している。条件と採用範囲は製品ごとに確認しなければならない。
10月の契約を9月末までの第3四半期業績に結び付けてはいけない。実際の処方件数、純売上、契約採算、新規PBM合意の履行が価値を判断する指標となる。
SOURCES
参照した主な資料
- セルトリオン — 米国でのオムリクロ・アブトズマ供給契約(2026年10月26日)
特定医療グループの保険・病院供給、従業員保険35万人と割引会員7,400万人、既存取引関係、PBM協議。
- セルトリオン — オムリクロ米国発売(2026年10月6日)
10月5日の発売、最初のオマリズマブ・バイオシミラー、相互代替可能性、大手PBM優先採用。
- セルトリオン — 2026年第3四半期確定業績(2026年10月27日)
公式発表一覧。売上1兆5,755億ウォン・営業利益5,253億ウォン、後続製品9,058億ウォン、累計オムリクロ3,205億ウォン。
- 米FDA — 医療専門家向けバイオシミラー解説
バイオシミラーと相互代替可能製品の定義、州法に基づく薬局での代替条件。
2026年10月29日作成。10月26日セルトリオン公式発表に基づく医療企業内のオムリクロPFS・アブトズマIV/SC独占供給、保険処方集と病院供給、別の小売企業の従業員保険対象約35万人・割引会員約7,400万人。いずれも患者数ではない。ストボクロ・オセンベルトの既存取引、追加PBM協議も同社発表。米国発売は10月5日(10月6日発表)。10月27日公表の第3四半期決算は9月末までの売上1兆5,755億ウォン、営業利益5,253億ウォン、新製品売上9,058億ウォン、オムリクロ累計3,205億ウォン。米国市場全体の独占、契約金額・相手先・実処方や利益は未確認。10月の契約が第3四半期業績を生んだとは解釈しない。