COOは社内登用82%、CHROは外部登用51.6%。同じ経営幹部でも違う
2026年上期、Russell Reynolds AssociatesのグローバルCOO異動調査では、新たに最高執行責任者に就いた73人のうち60人、82%が社内出身だった。一方、別に集計された最高人事責任者CHROの異動調査では、新任95人の51.6%が社外からの登用で、社内登用は48.4%だった。
米国S&P500構成企業に限ると、新任CHROの外部登用比率は65%に達した。事業運営を担うCOOは内部から、人材と組織を担うCHROは外部から探す傾向にも見える。経営幹部の後継者計画やエグゼクティブサーチを考える企業には興味深い対比だ。
ただし両調査の企業群は一致しない。COO指数は世界10の株価指数、CHRO指数は12の指数を追跡し、役職ごとの対象人数も違う。したがって役職の違いが登用経路の原因だと断定したり、すべてのCOOは内部、CHROは外部が正解だと結論づけたりする根拠にはならない。
COOの新任73人と退任29人。その差は何を意味するのか
COOの新任は前年同期74人から73人へとほぼ横ばいだったが、退任は44人から29人に減った。その結果、新任と退任の差は44人になった。調査会社はこうした動きから、企業の全社的な業務執行を担うリーダーの役割が広がっている可能性を指摘している。
ただし差引44人のすべてが完全に新設されたCOOポストだとまでは分からない。従来の空席を埋めた人事、職責の拡大、組織改編などが含まれ得る。役職の増減を理解するには、個別の会社でどの権限と責任が増えたのかを確認しなければならない。
もう一つ重要なのは、新任COOの86%、73人中63人が初めてCOOを務める人だったことだ。初任か経験者かという区分と、社内か社外かという区分は別のものだ。社内登用者全員が初任者だったとは言えないが、これまでCOOでなくても広い執行責任を任される経営人材が少なくないことは分かる。
CHROは外部経験を重視か。S&P500では経験者が60.9%
世界全体の新任CHROでは62.1%が初めてその役職に就いた。つまりCHROという肩書の経験がない人にも登用の機会がある。しかしS&P500では初任CHROの比率が39.1%にとどまり、60.9%は過去にCHROの経験を持つ人だった。
同じS&P500の外部登用比率は65%である。大規模な米国企業では、外部の視点と、すでに最高人事責任者として組織を動かした経験を相対的に重視している可能性がうかがえる。ただしこの数字だけでは、各社がどんな理由で候補者を選んだのかまでは分からない。
外部65%と経験者60.9%は加算できず、外部登用された全員が過去にCHROだったという意味でもない。出身企業と過去の役職経験は異なる区分だからだ。公表された集計には、個々の登用者について両方を組み合わせたクロス集計は示されていない。
社内で育った強みと社外で得た変革経験は同じなのか
COOには製造、調達、営業、技術、人材などを横断し、事業戦略を実行に移す仕事がある。同じ企業の複数部門で働いてきた内部候補者は、組織図には載らない意思決定の流れや現場の制約、他部門との関係を理解している可能性がある。社外から来た人が短期間で身につけにくい知識だ。
一方、新規事業への進出や大幅な業務改革では、過去の社内経験だけでは足りない場合もある。CHROにも採用・報酬・労務の管理を越えて、AI導入に伴う仕事の再設計や事業統合を実行した経験が求められ得る。別の企業で変革を進めた人材は比較材料を持ち込めるかもしれない。
しかしこれらは能力についての仮説であり、COOとCHROの登用率の違いを統計的に説明したものではない。有名企業で実績を残した外部候補者が、今回の会社でも同じ成果を出せる保証はない。内部での経験も外部での経験も、これから任せる使命にどれほど応用できるかを検証すべきだ。
10月13日の研究が問う、将来のCHROを育てる経験の不足
Russell Reynoldsは10月13日、『The CHRO Pipeline Was Built for a Different Job』を公開した。2026年に現職CHRO25人超へ秘密保持のもとで行ったインタビューでは、将来の最高人事責任者には、事業全体への理解、責任者がはっきりしない問題で人を動かす影響力、定型的な答えがない状況での判断と実行が必要だという論点が浮かび上がった。
例えばAIを導入する仕事自体は技術部門が主導できる。しかし自動化で必要な作業時間が変われば、職務、社員配置、評価制度、教育、報酬なども見直す必要が出てくる。技術担当者にも人事担当者にも一人では解決できない問題で、経営陣を横断して判断する役割が求められ得る。
給与・採用・労務の仕事で成果を上げた後継候補者が、全社変革でも力を発揮するとは限らない。本人の能力だけを問う前に、会社が別部門や曖昧な課題に取り組む経験を与えてきたかも確認したい。ただしこの研究はインタビューに基づく定性的な知見であり、全企業のCHRO能力を測った統計ではない。
社内候補と外部候補には、同じ評価の問いを適用する
エグゼクティブサーチでは、社内候補者を勤続年数や社内評判で評価し、社外候補者を前職の肩書や有名企業での実績で評価することがある。しかし基準が違えば、どちらがこれからの会社の課題を解決できるかを公平に比較することは難しい。
Banseogの分析では、双方に五つの共通質問を置ける。第一に今後2〜3年間の事業上の使命、第二に所属部門を越えた実行経験、第三に既存の方法が機能しなくなった際の変革、第四に他社・他事業でも通用する能力と新たに学ぶ必要があること、第五に不確実な局面で自ら行った判断と結果責任である。
これはRussell Reynoldsの公式採点表ではなく、公表されたデータとリーダー像からBanseogが組み立てた比較の枠組みだ。社内候補の評判だけで成果を証明することはできないし、外部候補の以前の会社全体の成功を本人の成果として扱うこともできない。個人の判断と貢献を確認する必要がある。
外部サーチを始める前に考えたい三つの問い
第一に既存幹部の交代なのか、それとも新たな経営能力の追加なのか。第二に本当に社内の後継者がいないのか、まだ準備状況を十分に評価していないだけなのか。第三に外部候補の過去の成功は、この会社の規模、権限、投資余力でも再現できるのか。役職名だけでは適切な人材市場を決められない。
後継者計画自体の準備にも差がある。Russell Reynoldsが2025年に公表した別のCOO研究では、2024年のCOO回答者107人のうち、事前に正式な後継計画を整えていると答えた比率は22%だった。必要になってから正式な手続を動かす人は38%、非公式な進め方は40%だった。これは2026年上期の新任COO73人とは異なる調査だ。
社内育成と社外エグゼクティブサーチは必ずしも二者択一ではない。将来の社内リーダーを育てながら、社外人材が持つ能力も比較できる。外部市場を調べた結果、社内候補者が最も適していると分かることもある。サーチ会社には名簿の量よりも、実際の能力の差を検証する力が求められる。
BANSEOG VIEW|内部か外部かより、未来の経営の仕事を先に定義する
2026年上期のCOOは内部登用82%、CHROは外部登用51.6%だった。しかし調査対象は同一ではなく、その差の原因が役職の性質だと証明されたわけでもない。COOは内部から、CHROは外部からという単純な規則に置き換えてはいけない。
企業が先に決めるべきなのは、今後どの事業問題を解決し、幹部にどの権限と責任を持たせ、どの成果を求めるのかだ。次に社内後継者が必要な経験を積んでいるか、社外候補者の経験の何を自社へ持ち込めるか、同じ使命に照らして検証する。
経営幹部に任命した当日に必要な能力が生まれるわけではない。社内育成には職能をまたぐ経験と時間が要り、外部サーチには人材市場の比較と個人の実績を見極める判断が要る。大事なのは『社内か社外か』だけではない。将来の会社を動かせる人を、いま本当に育てているかという問いだ。
BANSEOG VIEW
Banseogの視点|内部か外部かを決める前に将来の使命を定義する
COO社内82%とCHRO外部51.6%は異なる調査対象の2026年上期の実績であり、役職による登用経路の因果関係は確定しない。初任・経験者という軸とも区別する必要がある。
内外の候補者を同じ未来の使命で比較する。その際は事業課題、職能横断の実行、変革の判断、経験の移転可能性、本人が担った責任を具体的に確認したい。
エグゼクティブサーチは外部人材を必ず採る仕組みではなく、社内の後継者を育てつつ社外市場の能力を比較する手段にもなり得る。
SOURCES
参照した主な資料
- Russell Reynolds Associates|Global COO Turnover Index、2026年上期
新任COO73人、社内登用60人(82%)、初めてCOOになる63人(86%)、退任29人、差引44人。対象は世界10の株価指数。差引人数だけで44の新設職位とは断定できない。
- Russell Reynolds Associates|Global CHRO Turnover Index、2026年上期
新任CHRO95人、外部登用51.6%・社内登用48.4%、初任62.1%。S&P500新任CHROは外部65%、初任39.1%、経験者60.9%。COO指数と調査母集団が異なる。
- Russell Reynolds Associates|The CHRO Pipeline Was Built for a Different Job(2026年10月13日)
現職CHRO25人超への秘密保持下の定性インタビュー。事業全体の理解、職能の境界を越える影響力、責任主体が曖昧な問題への判断と実行を重視。統計的な因果関係の検証ではない。
- Russell Reynolds Associates|Future-Proofing the C-suite: Addressing the COO Succession Imperative(2025年1月6日)
2024年調査のCOO107人で事前の正式な後継計画22%、必要時に準備する正式手続38%、非公式40%。2026年上期の新任COO73人とは別の標本。
2026年10月17日作成。Russell Reynolds COO H1 2026新任73人、社内60人(82%)、初任63人(86%)、退任29人、差引44人。差引44人がすべて完全な新設職位だと断定できない。CHRO H1 2026新任95人、外部51.6%、社内48.4%、初任62.1%、S&P500外部65%・初任39.1%・経験者60.9%。COO指数10とCHRO指数12の対象は一致しない。出身企業と初任経験は別区分で個人レベルのクロス集計は確認できない。10月13日公開の現職CHRO25人超への研究は定性的なインタビューであり、因果関係の証明ではない。2025年1月公開のCOO研究が引用する2024年COO107人調査は先手の公式後継計画22%、必要時の公式手続38%、非公式40%で、2026年新任者と別の標本。五つの判断項目はBanseogが公開情報から独自に作成した分析枠組みであり、調査会社の公式評価表ではない。