世界では増員、米州では減員――同じEYの数字だ

2026年10月8日に報じられたEYの2026年度決算では、世界の売上高が570億ドルとなり、成長率は4.7%だった。AI関連サービスの売上高は49%伸び、世界の人員も約1万人増えて約41万5000人となった。

ところが米州では人員が約4500人、率にして約5%減った。一方、Global Entitiesと呼ばれるグローバル共通・支援組織の区分では1万人以上増加した。会社全体が成長していても、すべての地域で人員が増えているわけではない。

ここからAIによる4500人の解雇や、海外への同数の業務移転を断定することはできない。最初に問うべきなのは、仕事と責任をどの組織に配置しているのか、ということだ。

実は2025年度にも同じ方向の変化があった

EYが公表した2025年度の公式人員表では、米州は2024年度の9万2638人から9万2030人へ608人減少した。一方、Global Entitiesは7万4918人から8万1990人へ7072人増えている。

2026年度の報道でも、米州は減少し、Global Entitiesは大幅に増加している。一年限りの数字より、この二年の並びのほうが検討する価値がある。

ただし両年度の人員変化が同じ理由で起きたとは限らない。採用と離職、需要の増減、組織再編、集計区分などの影響を分離しなければ、実際の人員移動は確認できない。

Global Entitiesを海外委託の人員数と読み替えてはいけない

EYの公式説明では、Global Entitiesはグローバル共通のサービスと機能を含み、その中にGlobal Delivery Services(GDS)がある。GDSは各国メンバーファームの顧客担当チームや社内業務を支援する。

したがってGlobal Entitiesが1万人以上増えたという数字を、そのまま海外への業務委託人数と呼ぶのは正確ではない。GDS以外の共通機能も含まれるからだ。

それでも顧客に近い地域別の組織と、複数国を支える共通組織で人員の動きが違う点には意味がある。境界をどこに引くのかという組織設計の問題が浮かぶ。

約70億ドルのマネージドサービスは、単なる助言ではない

Financial TimesによればEYのマネージドサービス売上高は約70億ドルとなり、前年比13%成長した。税務、財務、IT、サイバーセキュリティーなど、顧客の業務を継続的に担うサービスが含まれる。

企業に何を変えるべきか助言することと、実際に業務を運営し続けることは異なる。後者には反復可能な手順、品質管理、情報セキュリティー、業務責任の明確化が欠かせない。

ただしマネージドサービスは売上・サービスの区分で、Global Entitiesは社内の人員区分だ。両方の数字が増えたからといって、前者が後者の増員を引き起こしたとまでは証明できない。

AI関連売上が49%伸びても、人員が一律に減るわけではない

EYのAI関連サービス売上成長率は2025年度の30%から2026年度には49%へ加速した。同社は従業員の研修・能力開発に4億4800万ドルを投じたほか、地理的な18地域を10地域へ再編した後の最初の通期を終えた。

AIは既存の専門業務を効率化できる一方、顧客企業に新しいデータ統合、ガバナンス、業務改革、運用体制の設計を求める。成長する仕事と縮小する仕事が混在する可能性がある。

しかしAIが特定職種を何人減らし、どの職種を何人増やしたかは今回の地域別人数からは分からない。職種や案件単位の追加データが必要だ。

問われるのは採用人数より、業務と責任の置き場所

複数国で専門サービスを提供する会社には三つの問いがある。第一に、顧客の事情や現地規制を理解する担当者はどこに置くべきか。第二に、手順を共通化できる実務をどの組織で遂行するか。第三に、国をまたいだ成果の品質と最終責任を誰が負うのか。

給与水準が低い国に業務を移せば常に得になるわけではない。データの越境移転、アクセス権限、言語、時差、顧客の対応速度、事故対応、規制遵守もコストになる。

この問いはEY自身が特定の業務を海外に移転したという断定ではなく、今回の人員変化を他社の組織戦略に応用するための検討軸だ。

人材戦略にも同じ境界が必要だ

米州の人員が減ったからといって、顧客と向き合う専門家の価値が下がったとは限らない。Global Entitiesが増えたからといって、共通業務の人材が誰でも代替できるわけでもない。

新しい採用計画では、現地で判断すべきこと、共通組織で標準化できる実行、複数地域をつなぐ品質管理を分けて考える必要がある。そこで初めて必要人数、国・地域、専門能力の優先順位を決められる。

働く個人にとっても、自分の仕事のどこが手順化でき、どこに個別の状況判断と責任が残るのかを説明できることが重要になる。

BANSEOGの視点|成長する場所と責任を負う場所は同じとは限らない

EYは世界全体では成長したが、地域の人員は一様に増えたわけではない。米州では2025年度と2026年度に減少し、Global Entitiesでは増加した。同時にAI関連サービスやマネージドサービスは伸びた。

この事実は、米州の仕事が海外に移された証明でも、AIによる解雇人数の証明でもない。しかし企業の成長と地域別の人員増加が比例しないことは示している。

次の採用計画で考えるべきなのは何人増員するかだけではない。顧客との接点、実務の遂行、最終責任をどこに置くかという設計が先に来る。

Banseogの視点 — 顧客接点・業務遂行・最終責任

2025年度のEY公式統計と2026年度の報道では、米州の人員減とGlobal Entitiesの増員が続いている。

Global EntitiesはGDSだけではなく、この数字でAIによる解雇や海外移転を直接証明することはできない。

人材計画は、顧客との接点・標準化された業務・成果の責任をどこに置くかで変わる。

参照した主な資料

2025年度の地域別人員はEYの公式統計による。2026年度の世界・米州・Global Entitiesの人員変化は2026年10月8日の報道に基づく概数である。AIによる解雇、社員の海外移転、マネージドサービス売上とGlobal Entities増員の因果関係は確認されていない。人材・組織戦略への示唆はBanseog独自の分析である。