現場の40.6%が「採用・定着に影響」。それは離職率ではない

もし工場や建設現場、物流倉庫の仕事を選ぶなら、給与と休日のほかに何を知りたいだろうか。真夏の猛暑や急な大雨の日、会社は実際にどう働かせるのかという質問が重要になっている。2026年10月15日にパナソニック コネクトが発表した調査では、日本の現場担当者と管理部門の500人のうち40.6%が、厳しい気象による採用・定着への何らかの影響を感じていた。

この40.6%は実際に退職した社員の割合ではない。高齢作業者の負担が増えたとの回答が19.0%、体調不良による欠勤・休職が増えたとの回答は16.0%、若手・新規採用が難しくなったとの回答は15.4%だった。気象を理由とする離職が実際にあったと答えた人は7.4%で、複数の回答項目を合計して一つの離職率と考えることもできない。

調査は9月29~30日に全国の20~60代の現場・管理部門担当者500人を対象にインターネットで行われた。日本全企業の実際の離職率を測った公的統計ではない。しかし厳しい天候が健康と出勤だけでなく、人を採用し仕事を続けてもらう課題として認識されていることは分かる。

猛暑61.2%だけではない。ゲリラ豪雨も54.2%が影響増を実感

過去3年で何らかの気象リスクの影響が増えたと感じる人は82.2%だった。最も多かったのは猛暑・熱中症リスクで61.2%、次いでゲリラ豪雨・短時間の強雨が54.2%だった。台風の大型化や接近頻度の増加は31.4%、急な寒暖差は28.4%だった。強風・突風、大雪・寒波も回答に含まれている。

現場が抱える問題は一つではない。建設現場で作業を中止すると後続の工程が動かなくなることがある。物流の現場では配送や積み込みを変更する必要があるかもしれない。電力や水道などの設備では、悪天候の後に点検・復旧が必要になる場合もある。熱中症だけに対策を絞れば、別の種類の危険や業務上の影響を見落としかねない。

ただしこの調査は参加者が『影響が増えたと感じた』リスクを集計したもので、全国の降雨量や台風の発生回数そのものの増減を測った気象観測統計ではない。企業には自社の作業内容に応じて、どんな気象条件で誰が作業を止め、どの業務を先に変更するのかを考える必要がある。

45.4%が勤務時間や作業予定を変えた。その変更は生活にも関わる

回答者の45.4%は、過去3年間に気象に合わせて勤務時間帯や作業スケジュールを何らかの形で変更していた。休憩の回数や時間を増やしたのは27.6%、作業を中止する判断基準を新設したのは16.6%、悪天候を想定して工期・納期に余裕を設けたのは14.0%だった。早朝や夜間に作業を移したとの回答も9.6%に達した。

危険なときに作業を止めること自体は重要だが、止めた後の工程をどう組み直すのかという課題も残る。次の作業をいつ行うか、必要な人と道具をどう確保するか、取引先に約束した納期をどう調整するか。休憩を確実に取れる仕組みは、現場の生産計画と切り離して設計しにくい。

また仕事を早朝や夜間に移すと、通勤や食事、家族との時間にも影響する可能性がある。今回の調査がそうした生活面の影響を直接測ったわけではない。それでも勤務時間を変える判断は、職場の安全と働く人の日常を同時に動かすことを忘れるべきではない。

気象対応で新しい仕事も生まれた。30.2%が役割の追加を経験

異常気象への対応として新たな業務や役割が発生したと答えた人は30.2%だった。熱中症対策の管理者を任命したとの回答は17.4%、被災時の緊急対応体制を常設にしたのは10.6%、気象を監視し判断する専任の役割を設けたのは9.4%だった。経営陣が現場の気象対応を定期的に確認するようになったとの回答も7.6%あった。

勤務スケジュールを変更した人のうち55.1%は新たな役割も発生したと答えた。一方、変更していない人では9.5%だった。およそ6倍の差があるものの、時間を変更したこと自体が役割を増やしたという因果関係は証明されていない。もともと気象リスクが高い現場ほど、両方の対応を進めていた可能性がある。

気象情報を確認する人、危険な作業の中断を決める人、代わりの作業や人員を手配する人、緊急連絡を維持する人では必要な判断が異なる。これは新規採用が大幅に増えたという調査結果ではなく、現場の責任の分担が再設計され始めているという観察だ。

求人票に「休憩・防寒対策」を明記する人が7.6%いた

調査では7.6%が、求人票や募集要項に防寒装備や休憩体制といった気象への対策を明記するようになったと回答した。多数派とは言えないし、日本のすべての求人票に新たな基準が導入されたわけでもない。それでも会社の内部の安全対策を、応募者に伝える情報として扱い始めた動きは興味深い。

例えば同じような給与と休日の二つの仕事があるとする。一方は待遇と仕事内容だけを載せ、もう一方は暑さが厳しいときに誰が作業停止を判断するか、休憩をどう確保するかまで説明する。後者の方が働く環境を具体的に想像しやすいかもしれない。ただし求人票に書いてあることが職場で必ず守られるとは限らない。

若手や新規人材を採用しにくくなったという15.4%と、対策を求人票に明記し始めた7.6%は別の設問だ。対策の記載が採用成功率や離職率を改善したという測定結果ではない。応募者にとっては、会社見学や面接で休憩、作業停止、シフト変更の実際のルールを確認するための材料になる。

2025年に熱中症対策が義務化された。労働災害は1803人に増えた

日本では2025年6月1日から労働安全衛生規則の改正が施行された。暑さ指数WBGTが28度以上、または気温31度以上の場所で、連続1時間以上あるいは1日4時間を超えて行われると見込まれる作業などについて、熱中症のおそれがある人を早期発見する報告体制、重篤化を防ぐ手順、関係する作業者への周知が必要になった。気温31度ですべての仕事を一律に停止する制度という意味ではない。

厚生労働省が2026年5月27日に発表した確定値によれば、2025年に職場の熱中症で死亡した、または4日以上休業した死傷者は1803人だった。前年より546人、約43%増えて過去最多となった。一方、死亡者数は前年の31人から19人に減少した。厚生労働省は厳しい夏の暑さが死傷者の増加に関わったとみており、重篤化防止措置が死亡災害の抑制に一定程度寄与した可能性を説明している。

ただし二つの年の人数を比べただけで、法改正によって正確に何人の死亡を防いだかは計算できない。気温や仕事内容、現場での対応状況など複数の条件が変わるからだ。法律が求める安全対策を備えることと、働く人が長く続けたいと思える環境をつくることは重なる部分があっても同じ評価ではない。

厳しい天候は現場の人だけでなく端末も止める

パナソニック コネクトの調査では、気象要因でスマートフォンやタブレット、業務用PCが正常に動かなかった経験についても尋ねた。ここで示される割合は調査対象500人全員の比率ではなく、気象による端末トラブルを経験した人への別の質問である。その中で高温や低温による電池の急激な減少は50.6%、過熱による不調や停止は45.8%、反射で画面が見えない経験は36.1%だった。

この端末トラブル経験者の79.5%は、作業の中断や復旧までの待機、費用の増加、データの再入力など、仕事への影響を何らかの形で経験したと答えた。デジタル端末が作業手順の一部になっているなら、機器の信頼性が人の負担や納期にまで関わり得る。

なお調査主体は耐久性の高い業務用端末を販売する企業で、発表資料にも製品の紹介が含まれている。この結果だけで特定製品を導入すれば採用や安全の問題が解決すると主張してはいけない。現場の気象対応では、人の健康に加え、設備、情報共有、作業の流れを一緒に見る必要があるという示唆として読むべきだ。

BANSEOG VIEW|天候は選べなくても、会社の対応は選べる

今回の日本の現場・管理担当者500人への調査では、45.4%が勤務予定を変更し、30.2%が新しい対応業務を経験し、40.6%が採用・定着への何らかの影響を感じた。それぞれ別の質問であり、数字を並べただけで原因と結果が証明されるわけではない。ただし安全管理、仕事の予定、人員配置、採用を別々に考えにくくなっていることは分かる。

Banseogは現場の仕事を選ぶ人が、求人票や面接で三つのことを確認できると考える。どんな天候指標で危険を判断するのか。休憩や作業中断を決める権限と手順は誰にあるのか。勤務予定が変わった場合にどのように知らされ、勤務条件はどう扱われるのか。これらは求職者が実態を確かめるための問いであり、全項目が同じ法的義務だという意味ではない。

会社が『安全に配慮しています』と書くこと以上に重要なのは、厳しい日の現場で仕組みが機能するかどうかだ。猛暑や豪雨をなくすことはできないが、危険な時に誰が人を守り、どの仕事を止め、どのように予定を組み直すかは選べる。その違いが、給与や休日と並んで働く会社を比較する材料になる可能性がある。

Banseogの視点|会社が選べるのは天気ではなく、その対応方法

40.6%は採用・定着への影響の実感であり、実際に気象理由の離職があったとの回答7.4%とは別の数字。勤務予定変更45.4%や新しい業務30.2%との因果関係も確認されていない。

日本では2025年6月から条件付きで熱中症の報告・重篤化防止体制が義務化された。法的な最低限の安全対策と、求職者が長く働きたいと思える職場の条件は完全には同じではない。

求職者は危険な天候の判断基準、休憩と作業停止の実際の手順、シフト変更の通知方法を確認できる。会社には実際の運用を説明可能な労働条件として示すことが求められる可能性がある。

参照した主な資料

2026年10月18日作成。パナソニック コネクト2026年10月15日公表『異常気象と日本の現場 実態調査2026』は9月29~30日の建設・土木、物流、インフラ、製造、自治体・消防防災の20~60代現場と管理部門担当者500人へのオンライン調査。気象リスク増加を何らか実感82.2%、猛暑61.2%、ゲリラ豪雨54.2%、台風31.4%、寒暖差28.4%。勤務予定の変更45.4%、休憩増27.6%、作業停止基準16.6%、工期・納期バッファ14.0%、早朝・夜間化9.6%。新しい業務30.2%、熱中症管理者17.4%、緊急対応10.6%、気象監視9.4%。予定変更者55.1%と非変更者9.5%の新しい業務回答は相関であり因果関係ではない。採用・定着への何らかの影響40.6%、高齢者負担19.0%、健康を理由とする欠勤16.0%、若手・新規採用難15.4%、求人票への対応明記7.6%、気象理由の離職が実際にあった経験7.4%。40.6%を離職率と扱わない。端末故障経験者の中で電池問題50.6%、過熱による停止45.8%、画面視認困難36.1%、何らかの業務影響79.5%。調査主体は堅牢端末を販売し製品宣伝と関連し、全企業の代表標本ではない。厚生労働省の2025年6月1日施行改正はWBGT28度以上または気温31度以上で継続1時間以上あるいは1日4時間超が見込まれる作業の報告体制・重篤化防止手順・周知を求める。気温31度で一律作業停止ではない。2025年の熱中症による死亡または4日以上の休業を伴う死傷者1803人、前年より546人・約43%増、死亡19人は前年31人から減少。因果効果を確定しない。求人票上の労働条件としての意味はBanseog独自の分析で、採用や定着の改善が実証されたわけではない。