「最近の若手は管理職になりたがらない」で終わらせていいのか

マイナビの2026年調査では、20〜30代の役職についていない正社員のうち42.1%が「出世したい」、57.9%が「これ以上出世は望まない」と答えた。

数字だけ見れば、若手の昇進意欲が弱いように見える。だが理由まで見ると少し違う。

昇進したくない理由は「責任が重くなるため」57.2%が最多で、「メリットが感じられないため」41.1%が続いた。一方、昇進したい理由では「給与を上げるため」68.8%が最も多かった。

昇進を嫌っているのではなく、交換条件を見ているのかもしれない

責任が増えること自体より、その責任に対して何が返ってくるのかが見えにくい昇進は選ばれにくくなる。

もし昇進によって給与が上がり、意思決定権が広がり、面白い仕事を任され、次の転職でも市場価値が上がるなら、同じ『責任が増える』でも判断は変わる。

逆に、会議・部下対応・評価責任・残業だけが増え、給与や権限があまり変わらないなら、『今のままでいい』という判断も合理的になり得る。

若者は本当に昇進したくないのか — 別調査では59.1%が昇進意欲

ここで注意したいのは、若手全体を『昇進嫌い』と一般化しないことだ。

別のマイナビ調査では、20代正社員の59.1%が「昇進したい」と回答し、年代別で最も高かった。

対象者や質問条件が違うため57.9%と59.1%を直接比較することはできない。むしろ、成長や成功を望む若者は多い一方、どんな昇進でも受け入れるわけではない、と読む方が自然だ。

昇進の話が来たら、まず給与ではなく“交換条件”を分解する

昇進を受けるかどうかは『管理職になりたいか』だけで決めなくていい。ひとつのCareer Investmentとして分解すると判断しやすい。

まず実際の年収増加額を見る。基本給、賞与、管理職手当、残業代の扱いまで含めて、責任増加に対して報酬がどれだけ変わるかを見る必要がある。

次に時間を見る。会議、1on1、評価、採用、部下対応、他部署調整が増えるなら、その時間は家族、学習、副業、健康、次のキャリア準備との交換になる。

責任だけでなく、権限も増えるのか

管理職になると責任が増える。しかし採用、予算、優先順位、人員配置をほとんど決められないなら、責任だけを負って問題を解決する権限がない状態になり得る。

昇進前に『何に責任を持つのか』と同じくらい、『何を自分で決められるようになるのか』を確認した方がいい。

責任と権限の差が大きいほど、役職の見かけと実際の仕事価値はずれやすい。

その役職は、次の会社でも価値があるのか

昇進によって得られるのは今の会社での給与だけではない。10人のチームを率いた、採用した、評価した、予算を持った、新規事業を立ち上げた、といった経験は次の市場でも説明できる。

逆に社内固有の役職名だけが付き、外から説明できる経験や権限が増えないなら、将来価値は限定的かもしれない。

昇進が将来の市場価値を上げるかどうかも、投資収益の一部として見る必要がある。

管理職が合わなかったら戻れるのか

一度管理職になるとマネジメント側を歩き続ける会社もあれば、管理職から専門職へ戻れる会社もある。

人を管理するより専門性を深めたい人にとって、この可逆性は重要だ。

昇進の前に『合わなかったときに専門職へ戻れるか』を知っておくことで、昇進のリスクは大きく変わる。

BANSEOG VIEW | 昇進は肩書きではなくCareer Investment

57.9%という数字だけを見て『若手は出世したくない』と決めつけるのは早い。

責任57.2%、メリットなし41.1%、給与向上68.8%という組み合わせを見ると、若手が見ているのはResponsibilityとReturnのバランスかもしれない。

昇進は会社が与える肩書きではなく、自分の時間、責任、権限、報酬、将来の市場価値を交換する一つのキャリア投資として考えた方がいい。

大事なのは『昇進すべきか』ではなく、『この昇進で自分は何を失い、何を得るのか』を具体的にすることだ。

Banseog View — Promotion as Career Investment

若手の昇進意欲は単純な世代論ではなく、責任と見返りの交換条件として見る必要がある。

昇進判断では給与だけでなく、時間・権限・市場価値・専門職への可逆性まで確認する。

昇進は肩書きではなく、自分の時間と責任を将来価値へ変えるCareer Investmentとして評価できる。

参照した主な資料

57.9%は20〜30代の役職についていない正社員を対象にした調査。59.1%は別調査の20代正社員全体で、母集団・設問条件が異なるため直接比較できない。Banseogは両調査を『若手が一様に昇進を嫌っているわけではなく、昇進の条件をより厳しく見ている可能性』を示す補助材料として扱う。Career Investment、ResponsibilityとReturnの枠組みはBanseogの分析。