定年までいるつもりはなかった。それでも約4割は想定より長く残った

パーソルキャリアが2026年7月に実施した調査では、社会人1~3年目の若手社会人で新卒入社企業に「定年まで勤める」と考えていた人は6.3%だった。9割超は最初から定年まで同じ会社にいる前提ではなかった。

ところが現在の勤務期間を聞くと、約4割が「想定より長い、または長くなる予定」と回答した。約3割は逆に想定より短いと答えた。

「長くいる前提ではない」と「良ければ想定より長く残る」は同時に成立している。

残る理由は会社名ではなく、自分に合う環境だった

想定より長く働く理由には、人間関係や職場環境が良かったこと、自分に合う職場や仕事内容だったことが多く挙がった。今の会社で長期的に成果を出したい、キャリアを積みたいという回答も見られた。

一方、想定より短くなった側では、入社前のイメージとの差、仕事内容や社風のミスマッチ、他社で力を試したいという理由が出ている。

長期勤続は抽象的な会社忠誠より、『ここに残る理由がまだあるか』の判断に近づいている。

転職を選択肢に持つことと、すぐ辞めることは同じではない

dodaの別データでは、2026年4月に入社直後でdodaへ登録した新社会人は2011年4月比で約28倍だった。転職を将来の選択肢として持つ行動は長期的に拡大している。

一方で2026年4月は前年同月の90%まで減少した。dodaは、すぐ動くより現在の職場で経験を最大化しようとする行動が一部で増えた可能性を説明している。

選択肢を開いておくことと、今すぐ離れることは別の行動だ。

就活時は条件を見た。働いた後は『このままでよいのか』を考え始めた

若手社会人が就活時に抱えていた不安の1位は給与・年収で、ワークライフバランスが続いた。

しかし社会人になってから新たに感じるようになった不安の最多は『このまま今の仕事を続けてよいかわからない』で、全体の約3割だった。

入社前の問いが給与・勤務地・働きやすさなら、働いた後の問いは『この仕事を続けると自分はどこへ行くのか』へ変わる。

別の調査でも、実際に働くと企業を見る基準が変わった

学情が2026年8月に20代の就職・転職希望者186人を調査したところ、79.7%が新卒就活時と比べて企業選びの視点が変化したと回答した。

職歴3年以上、3年未満、職歴なしのすべての層で、新しく重視する項目の1位は『仕事内容』だった。第二新卒では『自分自身の今後のキャリアビジョン』も42.9%と高かった。

二つの調査は対象が異なるが、実務経験を経ると仕事内容と将来のキャリアが企業選びの中心へ入る点では重なる。

Retentionは『引き留める制度』より次の景色を見せる問題になる

若手に長く働いてもらうには、長期勤続を求めるだけでは弱い。最初から終身雇用を前提にしない人には『ここであと2年働くと何が変わるのか』を示す必要がある。

1年目に何を学び、2~3年目にどんな責任を持ち、次の役割でどんな能力がつくのか。先輩が実際にどこへ進んだのか。こうした情報がRetentionの中身になる。

勤続年数が待ち時間ではなく経験が積み上がる道に見えれば、想定より長く残る選択が生まれる。

BANSEOG VIEW | 長期勤続はデフォルトではなく、繰り返し選ばれる関係へ

終身雇用型の長期勤続は入社時点である程度前提にされた。現在は移動可能性を持ったまま、残る理由を毎年確認する関係に変わり得る。

若手が定年まで同じ会社にいるつもりがないことと、良い会社に長く残りたいことは矛盾しない。

企業の問いは『どう辞めさせないか』より『来年もこの会社を選び直す理由は何か』になる。

Banseog View — Default Tenure → Conditional Retention

転職を選択肢に持つ若手でも、仕事・環境・成長が合えば想定より長く残る。

就活時の条件評価から、勤務後は仕事内容・成長・キャリア方向へ判断軸が移る。

Retentionは勤続を要求する制度ではなく、次の役割と成長経路を継続的に見せる問題になり得る。

参照した主な資料

パーソルキャリア調査は、就活で生成AIを使う大学生412人と、従業員50人以上の企業に在籍し現在の仕事で生成AIを使う社会人1~3年目400人が対象。学情調査はRe就活サイト来訪の20代就職・転職希望者186人が対象。日本の全大学生・若手社会人へ一般化しない。