KTは侵入テスト経験5年以上とAIエージェント開発を同時に求める

韓国通信大手KTは2026年10月26日から11月1日まで、レッドチーム(模擬侵入、AI Pentesting)の経験者を募集している。正社員で勤務地は京畿道・板橋。Web・API・システム・ネットワークの侵入テストやAPT診断など、関連分野で5年以上の実務経験を求める。

求人にはMITRE ATT&CKを参考にした攻撃シナリオの設計に加え、LLMによるセキュリティ分析、ソースコード・脆弱性分析、診断の自動化、Pentest Agentの開発が並ぶ。人が侵入テストを実行する能力と、その一部をソフトウェアで実行する仕組みを設計する能力の両方を求める内容だ。

ただしKTが今回初めてAIを使う侵入テスト人材を採用したわけではない。9月15~27日の以前の募集にも、LLM分析とPentest Agent開発があった。10月の募集は職種をより明示した別の公募だが、組織新設や前回の採用失敗を証明するものではない。

一つの求人に三つの専門性が含まれている

第一は実際の侵入テストだ。Web・API・ネットワークなどの設定や動作を調べ、見つかった問題が実際に悪用できる脆弱性なのかを確認する。自動診断ツールの警告だけでリスクを確定できるわけではない。

第二は攻撃シナリオを組み立てて検証する能力だ。攻撃者のTTP(戦術・技術・手順)を分析し、MITRE ATT&CKなどの知識体系を参考に、複数の条件や手順がつながったときにどの防御が破られるかを検証する。

第三は繰り返せる分析・診断作業をAIエージェントやソフトウェアに実装する能力である。KTはこれらを同じ職務で要求するが、入社後の業務配分や実際のサービス導入範囲を求人だけから断定することはできない。

侵入テストには以前から自動化があった

脆弱性スキャナー、検査スクリプト、侵入テスト用のフレームワークは以前から広く使われている。生成AIによってセキュリティ診断の自動化が初めて可能になったわけではない。

AIエージェントが新たに担う可能性があるのは、承認された検査の途中結果を読み、追加検証が必要な項目を識別し、複数の証拠を整理して次の検査を提案または実行する部分だ。すべてを人の判断なしに実施する完全自律システムだという意味ではない。

自動化を広げる場合は検査対象の範囲、アクセス権限、使用可能な道具、停止条件、実行記録、結果の再現性を定める必要がある。専門家の判断の一部をソフトウェアに移すことと、最終責任を移すことは異なる。

SKシールダスの求人は専門家のノウハウの実装を明記する

SKシールダスも10月22日から、サイバーセキュリティAI LabsグループのPEN-AIサービス開発・診断人材を募集している。勤務地は板橋本社、正社員で、脆弱性診断経験3年以上が条件だ。Webアプリケーション、外部公開資産や攻撃対象領域の分析も業務に含まれる。

さらにAI AgentによるWeb脆弱性診断・侵入テスト自動化、攻撃シナリオの生成・実行・結果分析の自動化を要求している。特に『セキュリティ専門家の診断ノウハウをAIと自動化ロジックに実装する』という説明が注目に値する。

KTとSKシールダスが同一製品を開発しているわけでも、協業している証拠があるわけでもない。両社の公開求人から確認できるのは、実務経験とAI自動化開発能力を組み合わせた人材需要が存在するという点だ。

専門家の経験を会社が再利用できる仕組みに変えられるか

熟練した診断担当者はスキャナーの結果をそのまま採用しない。対象サービスの構造、権限、構成や他の証拠を考慮して、実際に問題が成立するか判断する。警告の数が多いことが高い品質を意味するわけではない。

その判断の中で繰り返し利用できる手順や条件をソフトウェアに落とし込むことが考えられる。専門家が検証基準を設計し、承認されたエージェントが一部の検査・記録を行い、人がリスクと対処の妥当性を確認する構成だ。

ただし設計・保守・誤検知の検証にも費用がかかる。自動化が既に診断精度や収益性を改善したというデータは今回の求人にはない。顧客や環境が変わっても安全で再現できる仕組みになって初めて事業的な価値を評価できる。

AIシステムの安全を調べる仕事とAIを使って侵入テストする仕事

AI SecurityにはLLM、RAG、AI AgentなどAIシステム自身の攻撃面や安全性を評価する仕事がある。一方、AI PentestingはAIを道具として使い、従来のWeb・API・ネットワークなどの脆弱性を診断する仕事だ。両者は重なる場合があるが同一ではない。

今回のKTとSKシールダスPEN-AIの公募は、後者とその診断ソフトウェアの開発が中心となる。SKシールダスは別のAIセキュリティ研究員の募集で、LLM・RAG・MCPやAgent自身の脅威とAI Safetyを扱う職務も提示している。

求人の職種名にAI Securityとあるだけで、どの人材でも同じ仕事ができると考えてはならない。AIが診断の対象なのか道具なのか、誰が結果の検証に責任を負うのかを区別する必要がある。

AIが報告した脆弱性を誰が事実だと判断するのか

疑わしい項目を大量に生成しても、実際に再現できない項目が多ければ人の検証時間が増える。反対に件数が少なくても重要な顧客システムの重大な問題を正確に見つければ価値は高い。

評価するときは真に有効な発見の精度、重要な診断対象のカバー率、人の確認を含む総作業時間、承認された検査範囲の遵守、記録と再現性を分けて考える必要がある。発見された問題が修正につながったかも別の指標になる。

これらはBanseogが提案する評価軸であり、KTやSKシールダスの公式KPIではない。自動検査の実行回数が増えることと顧客のセキュリティや利益率が改善することは別だ。

AI導入でセキュリティ専門家が不要になったとは言えない

KTは侵入テスト関連の実務経験5年以上、SKシールダスは脆弱性診断経験3年以上を求める。今回の公募からセキュリティ専門家の大規模な削減や完全なAI代替を示すことはできない。

変わり得るのは能力の組み合わせだ。侵入テストの経験を持つ専門家、LLM・Agentの自動化を設計するエンジニア、診断の妥当性とAIの運用を一緒に理解する人材には、それぞれ強みと確認すべき点がある。

企業は資格やAIツールの使用経験だけでなく、何を自動化したか、どの誤検知を確認したか、権限や停止条件をどのように設計したかという実務証拠を見る必要がある。これは正式な職種分類ではなく、募集要項から考えられる人材能力の整理だ。

応募者が確認すべき要件と募集期間

KTの募集はレッドチーム(模擬侵入、AI Pentesting)の正社員で、勤務地は板橋。2026年10月26日から11月1日まで応募を受け付ける。4年制大学卒、男性の兵役・免除、海外渡航条件を満たし、関連診断経験5年以上とATT&CK・AI Pentesting技術を備えた人材が対象だ。

SKシールダスのPEN-AI開発・診断は別の正社員求人で、板橋勤務、診断経験3年以上、応募期間は10月22日~11月15日となっている。応募は各社の公式採用窓口で行う必要がある。

KTの募集締切日は11月1日で一致するが、転載サイトには締切時刻の相違がある。正確な時刻はKTの採用ページで確認すべきだ。募集人員や採用後の具体的なプロジェクト配属は公表されていない。

募集している能力と実際に実現した成果を混同しない

求人で確認できるのは、セキュリティの実務知識とAIによる診断自動化を組み合わせて実装できる人材を求めているという事実だ。KTが全ての侵入テストをAI Agentに移したとか、9月の採用に失敗したから10月に再募集したという結論は確認できない。

SKシールダスのPEN-AIサービスの実際の顧客売上、自動化による時間短縮、精度改善や人員削減も求人には示されていない。両社の共同開発や同じ自動化レベルも確認されていない。

この事例は実績の発表ではなく企業がどのような専門能力を求めているかという公開された証拠だ。技術名よりも、判断のどの部分をAIに移し、それを誰が検証するかが重要な経営課題になる。

BANSEOG VIEW|専門家の判断をシステム化するほど、その検証が重要になる

KTとSKシールダスは実務的な侵入テスト、攻撃経路の理解、AIによる自動診断の実装を併せ持つ人材を探している。AIツールを使用したことがあるという経験だけでは不十分だ。

専門家の反復可能な手順をシステムへ移せれば、会社が利用できる知識資産になる可能性がある。しかし検査範囲の承認、誤検知の検証、実行記録、再現性、結果に対する責任が必要となる。

人材評価では技術の名称ではなく、何を自動化し、どのように安全性と精度を検証したかを見るべきだ。今回の求人からコスト削減、診断品質向上、雇用代替の実績を確定することはできない。

参照した主な資料

2026年10月28日作成。KTの10月26日~11月1日の正社員レッドチーム募集は関連経験5年以上、板橋、Pentest Agent開発。SKシールダス10月22日~11月15日のPEN-AI募集は経験3年以上。KTは9月にも同種のAI自動化人材を募集しており10月が初めてではない。転載媒体でKTの締切時刻が異なるため公式採用ページを優先する。募集人数、実際の自動化の成果、業績、雇用の代替は未確認。AI SecurityとAIを診断道具として使う侵入テストは異なり、評価指標はBanseogによる条件付きの分析。