CEO交代1回で5.8年、2回で8.5年。交代が投資回収を遅らせたのか

2026年10月23日、経営幹部サーチのRussell Reynolds Associatesはプライベートエクイティ(PE)傘下企業のCEO承継に関する追加分析を公表した。CEO交代なしの平均保有期間は5.5年、1回の交代は5.8年、2回は8.5年、3回は9.2年、4回は11.0年だった。

しかしCEOを2回交代させたために投資回収が2.7年遅れたと結論づけることはできない。長く保有された企業ほど交代が発生する時間も長い。もともと事業が難しかったから投資回収が遅れ、CEOを何度も交代させた可能性もある。

10月の新しい分析には異なる三つの資料がある

10月23日の報告書は、EMEAのPE・インフラ投資先におけるCEO・経営幹部の任用250件超、市場関係者への15件のインタビュー、2020~2025年の欧州PE投資回収完了企業196社を対象とする以前の研究を組み合わせた。

平均保有期間の数字は250件の任用データから新しく計算した結果ではない。8月26日にRussell Reynoldsが発表した『The CEO Decision』における、CEOの交代履歴を把握できた196社のデータだ。投資収益率ではなく保有期間についての比較である。

196社のうち135社でCEOが交代していた

調査対象196社のうち135社、約69%は保有期間中にCEOを1回以上交代させた。交代のあった企業の約4分の1では交代が複数回発生し、その集団の平均交代回数は2.4回だった。PE投資先でのCEO承継は例外的な出来事ではない。

買収後の経営安定化、統合、海外展開、事業モデルの転換、売却準備では必要な経営能力が変わり得る。ただし段階が変わるたびにCEOを交代すべきだという意味ではない。現在のCEOと経営チームの能力を別々に検証する必要がある。

交代0回と1回の平均保有期間の差は0.3年

買収時のCEOを維持した企業の平均保有期間は5.5年で、1回交代した企業は5.8年だった。この差から、CEO交代が必ず長期間の売却遅延をもたらすとは言えないことが分かる。

同時に、交代に費用がかからないという証拠でもない。実際の投資収益、負債、組織の継続性、事業の成長は同じとは限らない。交代がなかった場合に同じ企業がいつ売却できたかも分からない。

交代が多く保有が長いという結果は二方向に解釈できる

CEO交代2回では8.5年、3回では9.2年、4回では11.0年だった。経営者が何度も変われば戦略や組織を調整する時間が必要となり、実行が遅れる可能性がある。

一方、事業・財務の問題が深刻だったため売却が遅れ、その間に複数回のCEO交代が必要になった可能性もある。長期保有企業ほど交代の機会も多くなる。完了した投資回収だけの分析では、業界、負債、事業の難易度と時間の影響を十分に切り離せない。

1年以内の任命は4.4年、2年後の任命は7.7年

別の比較では、買収後1年以内に新CEOを任命した企業の平均保有期間は4.4年、2年経過後に任命した企業は7.7年だった。しかし『早期交代によって3.3年短縮した』という因果関係は示されていない。

2年を過ぎて交代した企業は、その時点まで少なくとも投資が継続している必要がある。買収時から計画された承継と、予想外の経営難から生じる交代も異なる。研究者自身が慎重な解釈を求めている。

新CEOの就任日と交代を決めた日は同じとは限らない

買収から2年後にCEOが就任しても、候補者の探索や評価はずっと前から始まっていたかもしれない。候補者の現職の契約、通知期間、交渉や移行準備が必要になることもある。

反対に、問題が明らかになっても次の四半期決算を待ち続けていた可能性もある。Banseogは『不適合の発見、代替案の検討、交代判断、選任、実際の職務開始』を区別することを提案する。ただしこの時間差は196社の公開データで測定されたものではない。

CEOを交代する前に経営チームを補強できないか

10月の報告書は、経験豊富なCFOやCOOの採用、次の成長段階を知る取締役会議長、経営者へのコーチングなど、CEOを維持したまま能力を補う手段を示した。

例えば国内営業に強いCEOが海外M&Aに対応するには、財務・統合・海外事業の責任者を増強できるかもしれない。根本的なミスマッチならCEO交代が必要な場合もある。重要なのは現在の成果と次の段階への適合を別々に評価することだ。

『承継計画は25%未満』は調査全体の確定数値ではない

10月報告書でインタビューされたあるタレント担当者は、自分の投資先企業のうち文書化されたCEO承継計画を持つ企業が25%未満だろうと推定した。これはインタビュー参加者の見積もりであり、PE業界全体の実測値ではない。

内部の有望な後継者が長い保有期間を待たず、他社のCEO就任を選ぶ可能性もある。外部候補者も業界、規模、投資家との協業経験、次の成長段階を同時に満たすとなると限られる。内部と外部の選択肢を日頃から維持することが重要だ。

投資委員会が過去の判断を守ろうとする危険

投資委員会は買収価格、経営計画、当時の経営陣の能力をまとめて評価して承認する。買収後にCEOへの疑問を示すことは、以前に承認した投資計画の前提を再検討するように感じられるという問題をRussell Reynoldsは指摘する。

しかし当時の情報で合理的だった判断と、新しい情報の下で今も同じ経営陣が最善かという判断は異なる。証拠を集める慎重さと、状況が悪化しても決断を延期することは区別する必要がある。

買収後の安定化、拡大、転換、売却では必要能力が変わる

買収直後には資金繰り・コスト・組織統合、拡大期には新市場やM&A、技術転換期には研究開発と資本配分、売却準備では買い手のデューデリジェンスへの対応が重要になり得る。すべての企業が同じ順序で成長するという意味ではない。

経営者個人がすべての役割を担う必要はない。CFO、COO、事業部責任者、取締役会に能力を分散できるかを検証する。CEO交代と経営チームの補強は別の戦略的選択肢である。

売却目標の18~24か月前から準備する理由

Russell Reynoldsが聞き取った投資家は、通常、目標売却日の18~24か月前から正式な売却準備を始めるという。買い手は財務実績だけでなく、買収後も経営チームが成長を続けられるか、重要人材が残るかを確認しようとする。

売却直前に初めてCEOの能力不足を認識すると、内部育成や外部の候補者評価、就任後の組織安定化に必要な時間が不足する可能性がある。ただし売却前のCEO交代が常に悪いという意味ではない。

エグゼクティブサーチは名前探しの前に経営課題を定義する

CEOを探し始める前に、業績不振の原因がCEO個人、C-suiteの能力不足、組織設計、ガバナンス、事業環境のどこにあるかを検討できる。CFOやCOOの補強で解決できるならCEO交代が唯一の答えではない。

交代が必要なら肩書きだけでなく、過去に実際に担った意思決定責任、同じ成長段階での成果、企業規模や資本構造への適合、就任可能時期を確認する。これはBanseogによる評価の提案であり、特定のサーチ会社の成果実績ではない。

結論はCEOの交代回数ではなく選択肢の維持にある

196社の欧州PE投資回収実績ではCEOの交代回数と平均保有期間の間に関連があった。だが交代の因果効果や、同じ会社が交代しなかった場合の結果は分からない。長期保有そのものが交代の機会を増やす。

実務上の重要な問いは、現在のCEOが次の経営段階にも適しているか、不足する能力を補えるか、内部の後継者と外部候補を用意しているかだ。危機が深刻になってから選択肢を探すのでは遅い可能性がある。

BANSEOG VIEW|選択肢が消えてからのCEO交代が高くつく可能性

CEO交代が2回あった企業の平均保有期間8.5年は、交代によって保有が延びたという証拠ではない。長期間保有していたために複数回交代した可能性や、難しい経営環境が両方を引き起こした可能性がある。

企業が分けて考えるべきなのは、現在のCEOが成果を出しているかと、次の経営段階でも適切かという二つの問いだ。CFO・COO・取締役会の補強で解決できる場合も、外部から新CEOを選ぶ必要がある場合もある。

承継とは候補者の名前だけを用意することではない。事業の状況が変わったときに維持・補強・交代から選べる時間と実際の候補を持つことだ。今回の数字だけで特定の選択が投資収益を高めるとは証明できない。

参照した主な資料

2026年10月28日作成。Russell Reynoldsの10月23日発表にはEMEAの任用250件超、15件のインタビュー、別の欧州PE投資回収196社の研究を含む。5.5・5.8・8.5・9.2・11.0年と就任時期別4.4・7.7年は8月26日の元研究に由来する観測値で、因果効果ではない。135/196社が少なくとも一度交代。長期保有による時間的な偏り、投資回収完了会社のみの標本、事業の難易度に注意する。承継計画25%未満はインタビュー参加者一人の推定で業界全体の実測値ではない。売却準備18~24か月も聞き取りによる。経営幹部サーチの評価基準はBanseogの分析である。