不思議な場面:まだ社員ではない人に、現場社員の時間を使う

9月25日のEconomist Koreaは、Samsung、SK、LG、Hanwha、Lotte、KTなど29社がK-New Deal Academyに参加し、4,500人の若者を教育すると報じた。企業は2〜6か月の職務教育と実務経験を提供する。

企業側にはカリキュラム設計、講師・メンター、設備、プロジェクト運営の負担がある。しかも教育参加者全員が、その企業に入社するわけではない。

それでも企業が採用前まで入る背景には、AIや半導体など変化の速い分野で、学校教育と実務で必要な能力の差を既存の採用市場だけでは埋めにくいという問題がある。

Samsungは1,000人、LGは1,000人、SK hynixは10週間の半導体教育

Samsungは2026年に「青年希望学び場」を新設し、非首都圏の未就業若者1,000人を対象に実務型教育を提供すると発表した。

LGの「Let's Grow with LG」は1,000人を対象に、LG Electronics、LG Chem、LG Displayの専門性を反映した教育と実践AXプロジェクトを組み合わせる。LG Displayは基礎能力、AI活用、ディスプレイ専門教育をベテラン研究員が教える構成を公開している。

SK hynixのYouth Hy-Poは現在10期を募集している。公式カリキュラムは半導体の基礎・応用、ビジネス基礎、現場社員の講義、VR実習、実務プロジェクト、コンテストまで10週間で組まれている。

変化の本質は「教育が増えた」ことではなく、企業が採用の上流へ移動したこと

従来は学校 → 応募 → 面接 → 入社 → 社内教育という流れが基本だった。企業設計の職務教育は、学校と応募の間に新しい層をつくる。

韓国雇用労働部もK-New Deal Academyを、大企業などが自社の専門分野に合わせた訓練を主導して設計・運営し、若者の能力向上と労働市場への移行を支援する制度と説明している。

これをそのまま自社採用パイプラインと断定することはできない。ただ、企業が『市場にある人材を選ぶ』だけでなく、『必要な能力を経験した人が増えるようにする』段階へ関与していることは確認できる。

就活生にとっては、修了証よりカリキュラムを見る価値がある

企業が自ら設計したカリキュラムは、学校と実務の間に何が足りないと見ているのかを示す公開情報になる。

SK hynixは技術知識だけでなくプロジェクト、実習、ビジネス基礎を組み込み、LGはAI活用と業界専門教育を結び付けている。企業が見ているのは単独の知識より、実務につながる能力の組み合わせに近い。

「この講座を受ければ採用されるか」だけでなく、「企業がなぜお金と現場社員の時間を使って、これを教えようとしているのか」を読む方が重要だ。

企業カリキュラムはCapability Gap Mapとして読める

求人票は、応募者がすでに持っているべきものを示す。一方、企業主導の教育は、採用前に何を補おうとしているかを示す。

両方を比べると情報量が増える。求人で繰り返し求められ、教育でも繰り返し教えられる能力があれば、企業が重要視しながらも市場から十分な深さで得にくい領域である可能性がある。

教育カリキュラムだけで採用基準を断定することはできない。それでも、資格一覧より実務に近い形で準備の優先順位を考える材料になる。

人事側の問いも変わる:人が見つからないのか、必要な能力の供給が足りないのか

採用が難しいからといって、常に検索や母集団形成だけの問題とは限らない。市場に必要な能力を持つ人が十分にいなければ、リクルーターを増やしても供給そのものは増えない。

その場合、隣接経験者への拡張、要件再設計、入社後教育に加えて、採用前の教育、プロジェクト、産学連携も選択肢になる。

重要なのは、すべての企業が学校になることではない。Talent Strategyが「誰を探すか」から「どの能力が市場に生まれる必要があるか」まで広がり得るという点だ。

BANSEOG VIEW | 採用は応募より前から始まることがある

Samsung、SK hynix、LGの各プログラムは目的も運営方法も異なり、参加が採用を保証するものでもない。

それでも共通するのは、企業の産業知識と現場社員が、まだ社員ではない若者の能力形成に直接入っていることだ。

就活生にとっては、求人票に加えて「企業が何を教えようとしているか」という新しい情報源になる。

企業にとっては、今の人材不足が検索の問題なのか、それとも必要なCapabilityが市場で生まれる速度の問題なのかを分けて考える材料になる。

Banseog View — 採用前のCapability Formation

企業主導教育は、企業の関与を採用後から採用前の能力形成へ広げる動きとして読める。

就活生は企業カリキュラムを、企業が見ている能力ギャップの公開情報として利用できる。

企業は人材不足をsourcing不足とcapability supply不足に分けて考える必要がある。

参照した主な資料

29社・4,500人という数字は9月25日のEconomist Korea報道に基づく。韓国雇用労働部の6月の選定発表は53件(企業数では50社)で、集計時点と範囲が異なるため、本記事では両者を同じ全体総数として扱っていない。各社プログラムの規模と内容はSamsung、LG、SK hynixの公式情報で確認した。教育参加を採用保証や選考優遇とは解釈しない。「Capability Gap Map」「採用前のCapability Formation」は公開情報に基づくBanseogの分析フレームである。