永住権の関連手続きが止まっても、採用計画は止めない

2026年10月8日、米国政府はMicrosoft、Adobe、Cognizant、Capgemini、Tata Consultancy Services(TCS)、Infosys、Wipro、HCLTechの8社を対象に、雇用を通じた永住権取得に関係するPERM労働認証の新規申請受付と審査中の申請処理を停止すると発表した。

ところが翌9日、対象企業のTCSは今後5年間で米国に1万5,000人を追加採用する従来の計画を改めて示した。同社は直近2年間のPERM申請が一桁であり、米国の人材戦略や顧客向けサービスへの影響は想定していないと説明している。

外国人専門人材の永住権に関わる手続きが制限されても、なぜ現地採用を続けられるのか。企業が必要な人材を確保する方法と、一人の従業員が米国で長く働くための制度は、必ずしも同じではない。

今回の停止対象は、すべての就労ビザではない

PERMは、米国企業が一定の雇用ベースの永住権申請を進める際に、原則として米労働省から得る労働認証だ。該当職務に就ける適格な米国人労働者の有無や、同等職務の賃金・労働条件への影響などを審査する。

H-1Bは専門職の一時的な就労資格に関する別の制度で、PERM認証そのものが永住権の交付を意味するわけでもない。今回の措置は8社に関するPERMの新規・審査中の案件の処理停止であり、既存のH-1B資格がすべて直ちに無効になるとか、米国内の採用そのものが禁止されるという意味ではない。

米国政府は制度の不適切な利用に関する疑いを示しているが、それだけで対象企業すべての違法行為が確定したことにはならない。影響を見極めるには対象の手続きと申請段階を分けて考える必要がある。

TCSは『一桁、31拠点、1万5,000人』を示した

TCSの10月9日付の取引所向け開示によると、米国の人材確保は現地採用と大学卒業者の採用を中心にしているという。同社は全米31か所の事務所とサービス提供拠点を通じて、現地の人材基盤を構築してきたと説明した。

過去2年間に申請したPERMは一桁だった。それと同時に、今後5年間で米国内の人材を1万5,000人追加採用するという既存の計画を維持し、今回の措置は顧客業務に影響しないと予想している。ただしこれは会社の見通しであり、将来の採用人数がすでに確定・実現したわけではない。

一桁の申請件数を1万5,000人で割って依存度を計算することはできない。前者は過去2年のPERM、後者は今後5年の採用予定だからだ。それでもTCSが経営への影響を説明する際、米国の現地採用基盤を重視している点は明確だ。

Microsoftの『80%』は、TCSとは別の数字

Microsoftは10月8日、移民関連の論点について公式見解を公表した。前会計年度に提出したH-1B申請約6,000件のうち80%は、すでに働いている従業員の在留資格の延長・変更に関するもので、新規採用の申請ではなかったという。

残る新規従業員に関する申請も、すでに合法的に米国に滞在していた人を対象とし、その件数は米国従業員全体の約1%に相当すると会社は説明した。しかしこれはH-1Bの話で、TCSのPERM申請件数と直接比較できない。MicrosoftのPERM停止による影響人数も、この資料からは確定しない。

Microsoftは米国政府に追加情報を提供する意向を示し、同じ仕事の従業員には同等の給与を支払っていると述べた。企業側の主張と政府の疑義は区別しなければならない。

Infosysも重大な影響を予想しないが、根拠の公開範囲は異なる

10月10日、Infosysも公式の取引所向け開示でPERMの新規・審査中の申請停止を認識していると説明し、関連当局の問い合わせに協力する意向を示した。現時点で事業に重大な影響は見込まないとの立場だ。

一方、今回の発表にはTCSのような過去2年間のPERM申請件数や米国採用人数の数値は示されていない。二社が同じ理由で影響を小さく抑えられる、とまでは判断できない。

三社を比べる際には、TCSが現地採用とPERM申請、MicrosoftがH-1B申請の内訳、Infosysが事業影響の見通しをそれぞれ説明したことを踏まえたい。同じ数字を示したわけでも、共通の採点基準が公開されたわけでもない。

企業にとって小さな件数でも、一人の従業員には重大かもしれない

米労働省の2026年10月5日時点の公開情報では、PERMの通常審査は2025年12月受付案件が対象となっていた。また8月に決定された通常審査案件の平均処理日数は336日だった。これは米国全体の平均であり、今回の停止によって新たに336日遅れるという意味ではない。

企業全体のPERM申請が少なくても、その手続きを待つ人にとっては家族の生活、仕事の継続、将来の居住に関わる重要な問題になり得る。実際の影響は個別の在留資格や申請段階によって異なり、一律に就労不能になるという結論にはならない。

逆に、ある従業員のPERM審査が止まったことだけで顧客プロジェクトが直ちに停止するとも言えない。経営上の影響の大きさと、一人の専門人材に生じる不確実性は分けて見なければならない。

企業のサービス継続と、従業員のキャリアには別々の時間軸がある

一つ目は顧客業務の時間軸だ。企業は顧客に約束した時期に必要な技術者を配置する必要がある。現地採用、既存従業員の配置転換、海外のサービス提供体制、外部協力などを活用できる場合があるが、すべての技能や顧客知識が容易に代替できるわけではない。

二つ目は従業員の時間軸だ。専門人材が持つ顧客システムの知識や関係性が重要であれば、企業全体のPERM件数が少なくてもその人の長期的な就労見通しは経営上も大切になり得る。本人の権利・個人情報を尊重しつつ、適切な人事と移民法の専門家による支援を考える必要がある。

他の企業が確認したいのは、特定の担当者に仕事が集中していないか、現地で確保・育成できる技能は何か、知識の引き継ぎは可能かという点だ。これはTCSなどの非公開内部対策を推測した話ではなく、Banseogによる経営判断の観点である。

BANSEOGの視点|採用を続けられることと、全員が安心して働けることは違う

TCSは米国での現地採用基盤と少数のPERM申請を根拠に、今回の制度変更による事業上の影響は限定的と説明した。その判断が将来も正しいか、予定する1万5,000人の採用が実現するかは今後の事実を確認する必要がある。

MicrosoftのH-1Bの内訳とInfosysの重大な影響に関する予想は、TCSとは別の情報である。公開された数字だけで各社の制度依存度や法令順守の優劣を決めることはできない。政府の疑義を確定した違反と扱うべきでもない。

企業には二つの問いが残る。海外人材制度が変化しても顧客へのサービスを続けられるか。そしてその過程で、専門知識を担う一人ひとりのキャリアと長期的な関係を支えられるか。人材の供給力と、個人の雇用・在留の安定性は同じ数字では測れない。

Banseogの視点 — 現地採用力と個々の専門人材の安定性を区別する

TCSのPERM一桁は過去2年の申請件数、1万5,000人は今後5年の採用計画であり、直接の比率計算はできない。

Microsoftの約6,000件と80%はH-1Bの申請内訳で、TCSのPERM申請とは別の指標。Infosysは事業への影響見通しを発表した。

顧客サービスを続ける能力と、個々の従業員の長期的な就労・キャリアを支える能力を別々に評価する必要がある。

参照した主な資料

2026年10月11日までの公開情報に基づく。米国政府の措置は対象8社のPERM新規申請受付と審査中案件の処理停止であり、既存のH-1B資格をすべて取り消す措置ではない。PERM認証そのものも永住権ではない。TCSの過去2年の申請件数と今後5年の採用予定は別の指標。Microsoftの6,000件・80%はH-1B申請に関する数字でPERMの数字ではない。Infosysによる重大な影響なしとの見通しは会社の予測。336日は2026年8月決定の米国全体の通常審査平均で、この措置による追加遅延ではない。政府の疑義は確定した違法行為を意味しない。会社別の実際の影響や人材維持効果は未検証で、Banseogの分析は個別の法律相談ではない。